ビオトープ 水生植物を上手に育てる栽培基礎講座

スイレンの植え換え

見た目にも涼やかな水生植物の栽培。メダカやオタマジャクシなど水辺に棲む生き物と一緒に栽培できたり、楽しさの幅も広がります。しかし、普通の植物の栽培とちょっとコツが違うのも事実。ポイントさえ押えれば容易に栽培できる植物も多いのでぜひ、基礎知識を習得して水生植物の栽培に挑戦してみましょう。

園芸店などで購入してきたスイレンの苗は、小さくて貧弱なビニールポットなどに植えられていたり(姫スイレンなど)、プラスティック製や素焼きの植木鉢などに植え付けられています(温帯性スイレンなど)。ミニ・ビオトープなどへのスイレンの苗のセッティング方法は二通りのやり方があります。
①簡易的なセッティング方法
②理想的なセッティング方法
①の方法は、手間がかかる作業はできるだけしたくない方のための方法です。つまり、スイレンを購入してきたら、あらかじめ用意して水を張ってある栽培容器に購入時の状態のままの苗を沈めるのです。この簡易的な方法でも、元々比較的大きな植木鉢に植えられて販売されているスイレン(温帯性スイレンや熱帯性スイレンなど)では、意外とよく育ってしまいます。ただし、販売時に小さくて貧弱なビニールポットに植えられている姫スイレンなどは育ちが悪くなるようです。
②の理想的なセッティング方法は、次のように行ないます。まず、水を張る容器(スイレン鉢など)に入る大きさの素焼きの鉢などをあらかじめ用意しておきます。この素焼きの鉢は、高さがない平たい形の鉢が水深を稼げてよいようです。購入してきた苗をビニールポットなどから抜き取り、根に付いている泥を少し落とします。この泥は完全に落とす必要はありません。次に、新たに植え付ける鉢に鉢底ネットを敷き、それから水生植物用の土を先に少し入れます。そして、手で苗を持ち、苗が鉢の中央にくるように注意しながら土を入れてゆきます。土を入れる途中で、緩行性肥料の油かすを数個、混入させておきます。土を入れ終わったら、手のひらで土を上から軽く押して安定させます。このとき、苗に浮き葉がたくさん付いている場合は、葉の浮力で株が浮かんで抜けてしまう場合があります。そのような場合は、根茎の上の部分に適度な大きさの小石を重しとして置いておきます。新しい鉢への植え換えが終わったら、水を張った栽培容器の中へ鉢をちょっと斜めにしながら、そっと沈めてゆきます。スイレンの植え換えの手順は以上ですが、抽水性の水草の場合も、同じ方法で行ないます。ミニ・ビオトープを作る場合は、大きな花を咲かせるスイレンだけではなく、抽水性の水草を適度に組み合わせることで、より魅力的な水景が作れます。様々な水生植物の組み合わせによる素敵なミニ・ビオトープの作製は、かなり作製者のセンスがあらわになる部分です。植物の選択と組み合わせに、その人の美的センスがはっきりと出てしまうからです。

スイレン

・水生植物用の土、スイレンの苗、鉢底ネット、素焼きの鉢などを用意します。
・鉢底に鉢底ネットを敷き、用土を少し入れ、スイレンの苗を中央に植え付けていきます。苗が安定したら、軽く上から土を押して安定させます。
・スイレンの苗の植え換えが完了したら、やや斜めにしながらそっと水に沈めます。

丸形や四角形など水鉢の種類もさまざまです。また大型のものは植物や水を入れると想像以上に重くなります。ベランダや庭など、最終的な置き場所に配置してから植えつけを始めましょう。またベランダなどのコーナーなどに置くには四角形の水鉢がお勧めです。明るい色の水鉢は中に入れたメダカやオタマジャクシなどをよく観察することができ、楽しみも増えます。

水生植物の位置の調整

姫スイレンの場合は、株の根元(新芽が出る箇所)が水深が3~5cmになるようにレンガブロックなどを使って位置(高さ)を調節します。姫スイレン以外の温帯性スイレンの場合は、水深が10~20cmぐらいになるように位置を調節します。熱帯性スイレンの場合は、水深が10~30cmぐらいになるように位置を調節します。ちなみに、温帯性スイレンや熱帯性スイレンの場合、栽培場所がプールや池でかなり水深があるなら、株の位置の水深を30~50cm以上にしてもかまいません。スイレンの仲間は、浮き葉につながっている茎の長さは、水位の上昇に合わせてかなり伸ばせる性質があるからです。ただし、あまり極端に水深を深くしてしまうと、茎の付け根付近に光があまり届かなくなり、新芽が出にくくなる可能性が高くなります。水中に置くスイレンの水深調整に便利なレンガ・ブロックは、ホームセンターの資材コーナーで探すと、実にさまざまな種類の製品が売られています。レンガ・ブロックの色や質感がすべて異なることはもちろん、サイズ(縦横の寸法や厚さなど)もかなり違うものが色々と売られていますので、実際覗いて検討することをお勧めします。

草丈の変化と奥行き

草丈の変化と奥行き

寄せ植えの一般的な技術ですが、前景には小型種、後景には背の高い植物を植えましょう。水草の場合前景に浮き草も使えます。

不等辺三角に配置

不等辺三角

盆栽や生け花などとも共通の方法論ですが、植える植物の大きさ高さを考慮して、不等辺の三角形に配置すると視覚的に安定します。

植物の向きを考えて

植物の向き

観賞する際に正面を決めて、その方向から見た時にその植物の特徴か引き立つように植えます。植物の自然な方向性を活かします。

Q スイレンを育てていますが、花芽がなかなか伸びてきません。何が悪いのでしょうか?

A スイレンの仲間は、根を土中に伸ばして栄養分を吸収し、その栄養を使って浮き葉を伸ばし、さらに太陽の光をたっぷりと浴びながら光合成を行ない、自分の体を充実させてゆき、たくさんの新しい浮き葉を作ります。浮き葉が増えてその株の体力が大きくなってくると、やがて花芽を水面上へ伸ばし、花を咲かせるのです。つまり、花が咲かないということは、その株が花を咲かせるほど充分に力(エネルギー)をまだ蓄えられていないということです。また、花芽がつかない別の原因としては、日照不足が考えられます。スイレンの仲間は広い池や沼など、基本的に日当たりがとてもよい場所で進化してきた植物ですから、日照不足にはやや弱い面があるようです。また、この仲間は、茎の付け根付近(新芽や花芽が出てくるところ)に太陽光線が当たり、強い光の刺激を受けることで、葉や花の新しい芽の成長が促進される性質があります。そのため、水面に古い浮き葉がたくさん付いたままになっているためにこの箇所に太陽光が当たらない状態だと、薬や花の新芽があまり出てこなくなります(水面の面積が小さい栽培容器ほど、この現象が起こりやすくなります)。したがってこれを防止するために、定期的に古い浮き葉は適度に間引くようにしてください。なお、スイレンに花芽を出させる方法として、栽培容器の水を一度に招ほど交換し、刺激を与える方法もあります。なお、いくら花芽が出てこないからといって、油かすなどの肥料をたくさん与え過ぎないようにしてください。植物は動物と異なり、いわばその主な食料は、肥料などから得られる土中や水中の栄養分だけではなく、それらの栄養分十太陽の光なのです。植物は、根などを使って体外から取り入れた土中や水中の栄養分を材料に、太陽光を利用して行なう光合成で自分の体を少しずつ作り上げてゆくのです。そのため、充分な太陽の光がないのに肥料(油かすや液肥など)ばかりたくさん与えても、その栄養分を充分に活用できず、むしろその植物にとって過剰な肥料は有害となる場合すらあるのです。


Q スイレンの蕾にアブラムシ(アリマキ)が付いていました。どのように退治すればよいですか?

A 植物に取り付いて繁殖する小さなアブラムシは、時折羽が生えている個体が生まれ、空中を飛んで新たな場所へ移動し、生息域を広げます。そのため、水があるミニ・ビオトープに育つスイレンやその他の浮き草などにも寄生し、時には大繁殖して宿主の植物を弱らせます。アブラムシが大繁殖すると完全に駆除するのが極めて困難ですから、寄生を始めた初期の段階で指で潰したり、放水のシャワーで植物に寄生しているアブラムシを洗い流し、ミニ・ビオトープから水を溢れさせて水と共に流し去ってしまえばよいでしょう。植物に大量に寄生したアブラムシを簡単に殺して駆除する強力な薬も販売されていますが、水中でメダカなどの様々な生き物を飼っているミニ・ビオトープでは悪影響が考えられますので使えません。もちろん、自然環境の保全に関心がある人なら、環境に悪影響を与えそうな薬は使いたくないことでしょう。そのため、アブラムシの駆除は、早期発見による人の手による退治しかないのです。

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