ビオトープ 日常の管理と育成

植物にとって大切な光と水

植物の多くは根から水分を得て光を浴びて光合成をおこないます。水生植物もそれは同じです。

光の量の加減と水生植物ならではの水量

多くの植物と同様に、水生植物にも光と水が必要です。光に関しては他の植物とさほど変わりませんが、水生植物だけに水に関しては、大きく性質が異なります。光は光合成のために必要です。葉に含まれる葉緑素が、太陽からの光と根から吸収した養分を植物のエネルギーへと変換します。地上にはさまざまな環境に適応した植物が存在しており、それぞれどのぐらいの光を好むのかが異なります。植物によっては、強い光を好むものもあれば、明るい日陰(半日陰)程度の明るさのところを好む植物もあります。水生植物においてもそれは同様で、状態よく育成するためには、その植物が好む日当たりを再現してやる必要があります。次に水ですが、これも植物の生命活動に必要不可欠。水生植物は絶えず水に浸かっている、もしくは多湿の状況にある種類が多いものです。十分に水分が行き渡ると光合成も活発になり、肥料などの吸収、循環なども活発になります。この光と、水、そして土や温度などの環境を、育成したい植物が好む環境にいかに近づけるかが、上手く植物を育てるために重要です。
ビオトープの場合は、特に水の供給が重要なポイントになります。浮遊植物や沈水植物、浮葉植物の場合はほぼ常にたっぷりとした水が必要です。逆に言えば根腐れなどの心配はありません。余裕のある大きなサイズの容器や鉢に植え込み、水をしっかり張って水切れが起らないようにしましょう。水深も重要で、深いと水量は豊富ですが根元まで光が届かない場合もあり、浅いと水切れの危険があると同時に雨で用土が流れ出す危険があります。抽水植物や湿生植物の場合も水辺の植物は全般にふんだんに水を必要としてます。水切れしないように注意しましょう。植物だけ育てる場合は通常の水道水で大丈夫ですが、メダカやオタマジャクシなどの生物を飼育する場合は、置き水するなどして、消毒のために水道水に含まれる塩素を飛ばしたり温度を合わせたりする必要があります。急ぐ場合には、熱帯魚飼育などで使われる塩素中和剤(ハイポ)が便利です。メダカを導入する場合には袋ごと水に浮かべたりして、水質や水温に慣らす『水合わせ』をして導入すると安心です。

美しく元気に育てるための日常管理

基本的に丈夫で育てやすい植物ですが、より美しく育てるためには、日常的な細かいケアも必要です。

こまめな足し水と花が咲いたあとの処理

水生植物の手入れは、他の草花や花木とは異なり、頻繁な作業を必要としません。比較的丈夫な植物が多いので、初心者でも気軽に栽培することができます。とはいえ、植物の状態をこまめに確認することは大切。調子を崩しているようなら対処するようにしましょう。
まずは足し水。水鉢や睡蓮鉢に入れた水は植物に吸収され、また水面からも蒸発していきます。とくに夏場は気温が高くなるので、蒸発量が増え、なおかつ植物も急速に生長するので、水分をたくさん必要とします。鉢の水位は常に気にしておきましょう。水が減っているようなら足し水をします。ただし、冷たい水をいきなり注ぐのではなく、できるだけ鉢内の水温に近いものを補給するようにしましょう。また、メダカを飼っている場合は、水道水をバケツなどに入れ、しばらく日に当てて塩素を抜いてから足し水します。市販の中和剤を利用してもよいでしょう。こまめに足し水をしていれば急激に水質が悪化することはないので、鉢内の水を全部入れ替えることはありません。しかし植物の状態が崩れると、水が腐ったり、濁ってしまうことがあります。そのような場合には水換えを行います。ホースなどを利用して鉢に新しい水を少量ずつ注ぎ、鉢から水を溢れさせるようにして水を換えます。メダカなどいる場合は、網で掬って別容器に移しておくと安心です。
このほか、枯れ葉のカットや花がら摘みも大切な作業です。植物が生長すると、葉が繁茂して重なり合ってきます。それによって日が当たらなくなった葉が枯れたり、溶け出したりします。枯れ葉や茎は見つけ次第、はさみでカットします。また、水生植物は生長が早いものが多いので、器に対して株が殖えすぎることがあります。株元から間引くように剪定して風通しをよくしておくとよいでしょう。花が咲き終わったら、花がら摘みを行います。花がらをそのままにしておくと見栄えがよくないばかりか、タネを作るための養分がそちらにまわり、株が充実しない種類もあります。スイレンの場合、花が終わったら、株元の茎からカットするようにします。

スイレンの花がら摘み
花がら摘み

スイレンの花がらをそのままにしておくと見栄えが悪く、水質も悪化させます。花後はすぐに株元から花茎をカットしましょう。

間引き剪定
間引き

水生植物は丈夫な種頬が多く繁殖力も旺盛。株のボリュームが増えたら、間引き剪定(せんてい)を行って、風通しと日当たりをよくします。

Q 大きなスイレン鉢に抽水性植物のナガパオモダカを植えてメダカを飼っています。まだ、ナガパオモダカの株が小さいので、中を泳いでいるメダカたちに太陽光が長時間、直接当たっているのですが、大丈夫でしょうか?

A 野生のメダカ(クロメダカ)たちは、太陽の光に当たってもそれほど問題はありません。彼らの黒ずんだ体色は、強い太陽の光に含まれる紫外線などから皮膚を守っているからです。一方、シロメダカやアルビノメダカなどの改良品種のメダカたちは、野生のメダカたちと比べれば、強い太陽光に弱いことが考えられます。そのため、スイレン鉢の中に、陰になる部分を作ってあげた方がよいでしょう。簡単な方法としては、姫スイレンなどを植えて浮き葉を出させたり、あるいは、アマゾンフロッグビットやオオサンショウモなどの浮き草を、水面の早読の面積を覆う程度に浮かべておけばよいでしょう。

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